あなたの「少々お待ちください」のお時間は?

「少々お待ちください」という言葉は、つくづく「魔法の言葉」かと思う。
丁寧に接客されているような誤解をまねく言葉だ。
しかし、意識をして聞いていると、このところ「少々お待ちください」という言葉が頻繁につかわれている場面によく遭遇する。また、業界によって、その「少々の時間」がくい違うのも面白いところだ。

ボクの経験値ではあるが、「とある理由」で、この数週間「少々」の時間を計測している。

「少々」が一番早い業界は、ガソリンスタンド業界だった。
約30秒でお釣りを持って、30メートルの先から走ってきてくれる。
これは非常に心地良い。わざわざ走ってきてくれる「少々」だからだ。

二番目の「少々」は、飲食業界のようだ。
レジで少々お待ちくださいといわれても約1分くらいで、店長に何か確認する程度で終わるようだ。
これも我慢できる。

三番目は、コンビニ業界だろう。
お弁当をチンしてもらう約3分くらいの間が、「少々」のお時間のようだ。
これも、まだ我慢できる。

四番目は、銀行などの金融業界だ。
このあたりから、かなり待たされる。「少々」といわれて、約5分間くらいは平気で待たされる。
役所業界と一緒で、客は常に待たされるのが当たり前になっている。もしかすると、24時間銀行がATMでオープンしていることよりも、「他行より3分待たせない銀行」をキャッチフレーズで、行員が努力したほうが、コストパフォーマンスの高い営業になるだろう。
銀行の前でティッシュを配ったり、ニコニコ挨拶したフリをしているよりも、待たせない努力をすべきだろう。銀行が勝手に想像している「お客様のために」ではなく、「お客様の立場に我々も立って」が本当は重要なんだ。

五番目は、電話サポート業界だ。
こちらも、かなり待たされる。しかも対応する人の所作が見えないのと、オンフックのできない電話だと、耳に受話器をあてたままという「片腕ドラゴン」状態だから何もできなくてさらに辛い。しかも、オリビア・ニュートン・ジョンの「そよ風の誘惑」が3回くらいリピートされると、大好きだったオリビア・ニュートン・ジョンまで憎くなる。せめて「ジョリーン」と「ザナドゥ」を加えて欲しいところだ。

六番目の憂鬱は、今のボクにとっては運送業界だ。
amazonのマーケットプレイスで購入した本だが、あまりにも遅いので、落札した人に確認してみると、こんなメールがやってきた。
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神田さま

ご連絡ありがとうございました。未着とのことでしたので、早速お調べしてみました。発送はクロネコメール便で、お問い合わせ番号は955026806484でございまして下記のような結果になっております。
 1件目  伝票番号  9550-2680-6484
ただいまお届けするためにお品物を持ち出しております。
お問い合わせは担当営業所までお願いいたします。

荷物状況 日 付 時 刻 営業所名 営業所コード
発送 11/03 17:32 祐天寺宅急便センター            032430
配達中 11/04 07:14 初台メール便センター            332310
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なるほど、配達中なんだ…。そこで
黒ネコヤマトの荷物お問い合わせシステムで検索
http://toi.kuronekoyamato.co.jp/cgi-bin/tneko?init

955026806484
を打ち込んでみてください。
今、荷物はどこでしょうか?

なんと、昨年の11月から配達して、まだ届きません。これは船で地球をピースボート号で一周まわっているとしか思えません。黒ネコではなく黒ヤギメール便だったのかもしれません。

「黒ヤギさんからお手紙ついた。 白ヤギさんたら読まずに食べた…」 。

まぁ、これで騒ぐのも大人げない。どこにだって事故はつきものだ…と自分に悟した上で、電話で某黒ネコヤマトに連絡をした。すると、「事故かもしれませんねぇ…少々おまちください…」こちらの携帯でかけた電話なのに、「少々」の一声でずっと待たされる。

たぶん、1〜2分だと思うのだが、自分のケータイで運輸のプロフェッショナルのトラブル確認なのにDoCoMoに通話料金を払いながら待たされるのは、憂鬱ではなく、ストレスと同時にアンガー成分の神経細胞を逆なでされる思いだ。

また、でてきた対応の人が、さらに間が悪い。平板のイントネーションで「あのぅおう、こちらで調べてみたのですがぁあ、現在のところぉお、わかりかねませんのでぇえ、、少しお時間をいただけまんかぁあ?」
ボクは、しばらく沈黙だったが、ついにキレタ!

「あのですね。散々待たされた挙句に、少し時間をくださいはないでしょう!こちらは、荷物がとどかなくて困っている被害者ですよ!おりかえしスグに電話をください。番号をいいますよ…」電話の向こうは、メモをとるために、「少々おまちください」という。また、出た!「少々」が…。メモの用意もせずに電話を受けているんだろうか?

「これ以上、待てないので、1時間以内になんらかの回答をあなたの上長から必ず連絡ください。あなたのお名前は?フルネームでお願いします!所属は?そして上長の名前は?フルネームです!」といって、ケータイを切った。ケータイの時間は9分35秒をさしていた。こんな自分をボクはあまり好きではないが、受付の人への愛だと思って上長の電話を待つことに。

そのまま、サイトで約款を調べてみた。
http://www.kuronekoyamato.co.jp/yakkan/y_mail.html

「第三十六条 当店は、自己又は使用人その他運送のために使用した者が、荷物の受取り、配達、保管及び運送に関し注意を怠らなかったことを証明しない限り、荷物の滅失又はき損について損害賠償の責任を負います。

(損害賠償)
第四十条 当店は、この約款の規定に従って引き受けた荷物が滅失又はき損した場合に限り、第三十六条に規定するとおり、その損害を賠償します。
2 前項の場合における当店の損害賠償責任は、荷送人又はその承諾を得た荷受人の指示により、次の各号の一に該当する方法によるものとします。
  一 当該荷物の運賃、料金の返金
  二 当該荷物の代替品の無償運送 」

どうやら迷惑料とか謝罪金などは一切ないようだ。

オークションで落札したといっても、絶版本なのでどのような賠償になるんだろうか?と思っていたら、上長から連絡があった。

結果として、「現在はわからず、こちらでも追跡して調べてご連絡を差し上げます。ただ、時間が経過しておりますので、荷物の確認は少し難しいのかも…」とあきらめた様子の口調。「とにかくあきらめないで調べてください!」とつっぱねた。しかし、また「少々お時間をください」ということで「少々」で電話を切られてしまった。それは、1月14日(金)の15:00のことだった。 あれからまだ「少々」の時間は、ボクの心の中でずっとカウントしている…。

ボクは、この一件以来、大人げないのはわかっているが、軽々しく「少々」を口にする人たちすべてに、「あなたの"少々"は、いったいどのくらいのお時間なのですか?」と聞くことにしている。

すると、面白い反応を知ることができた。

丁寧に接客しているつもりで、何気なしに「少々」を使っている人たちは、おそらくはじめて客から時間をコミットメントさせられる経験を学習します。大概の人は、「1分から〜3分くらい」といいます。「長い人でも5分くらいです。さすがに10分という人はいません。これはいい効果のようです。
これは、実際に待たされる時間を聞いているのではなく、「少々」という数値化できない言葉の持つニュアンスの相違がないための確認なので、あくまでもコミットメントをこちらは求めていないという点がポイントです。

基本的に、その「少々」を確認した時間よりも早く「少々」の待ち時間は解決していることでしょう。
むしろ、コミットした時間が気になるので、早くこのタスクを終えたいという精神的圧力を相手に与えることができるようです。

時には、自分は「少々」も待てないんだという傲慢をカマしてもいいのではないかと思う。サービスのイノベーションはそんなことでも起きるはずだ。

荷物が届かないことから、こんなにいいノウハウの開発の機会を与えてくれた黒ヤギ便に感謝したい。